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フォルクスワーゲン排ガス規制スキャンダル、自動車メーカーはどこまで消費者を騙している?

フォルクスワーゲン

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フォルクスワーゲン(VW)の米国ディーゼル車排出ガス規制をめぐる不正問題が発覚してから1週間が経ちました。この問題は徐々に世界中に広まっています。フォルクスワーゲンだけにとどまらず、他メーカーについても疑惑が広がり始めているからです。VWはこのような不正を行う唯一のメーカーなのか、それとも、消費者と法規制を欺くこのような不正行為は広く普及しているのか? なぜこんな不正が起こったのか、そしてその影響は?このブログ記事で、これからフォルクスワーゲン社不正事件について詳しく見てみましょう。

フォルクスワーゲン社不正問題:事件の経緯

先週金曜日、International Council on Clean Transportation(ICCT:国際クリーン交通委員会)の報告を受けた米環境保護局(EPA)が、VWによる大掛かりな排ガス規制不正行為があったとしてこれを発表。米当局は、フォルクスワーゲンが世界各国でおよそ1100万台の車に、排出ガス測定試験が実施中であることを自動的に感知できる高度なソフトウエアを組み込んでいたと見ています。このスパイウエアで、運転者に気づかれずに排出ガスを抑える内部システムが作動してクリーンディーゼル車認定テストを問題なくクリアし、試験が終了すると排ガス防止システムも停止するというものです。つまり、これらの車は、仕様よりも多くの排気ガスを排出することになります。特に二酸化窒素(かの有名なNOx)は、喘息をはじめとする重篤な呼吸器疾患を引き起こす要因として知られており、毎年、大気汚染が原因で300万人以上が死亡することを考えると、きわめて深刻な影響です。排気微粒子の捕集フィルターを常時使用することはできません。エンジン性能が低下して、より頻繁な整備を要するからです。

その後、VW最高経営責任者の謝罪、ブランドの株価の下落、VWとアウディブランドの4気筒ディーゼル車の一時販売停止、そして最終的にCEOマルティン・ヴィンターコルンの辞任と、事は相次ぎました。

しかし、すべては後の祭り。米国のみならず、欧州や他の国々で、消費者の間に不審の念が広がってしまったからです。

最適な条件で行われる不完全な試験:

フォルクスワーゲンは、特に車のライフサイクル評価に関する研究を通した持続的発展の分野でビジネスモデルとされてきたというのに…。

今回のスキャンダルを受けて、ドイツおよび欧州の当局は、関連車種についての徹底試験、および他の自動車メーカーを対象に欧州で同様の不正行為があったかどうかを確認するための調査を実施しました。一方、アジアでは、韓国が市販のフォルクスワーゲン ゴルフ、ジェッタ、およびアウディ A3モデルについて排出レベルを検査する意向を発表しました(約15万台近くに相当、ドイツ車は同国の輸入台数のほぼ70%を占める)。

こうして各国が忙しく対応に追われていますが、実は、現行試験に限界があることは、これまでも指摘されてきました

2014年のCO2排出量についての平均差は40%

非営利団体Transport & Environmentによれば、新型ディーゼル車の路上走行時の窒素酸化物排出量は、検査場での試験結果の5倍に相当するということです。

「10車のうち1車のみが路上走行での排出規制に準拠」(Transport & Environmentによる)

実際、規制をクリアするために一部のパラメータに手を加えることはごく普通のアプローチです。例えば、タイヤ空気圧を高く設定すると(仏PSAやRenault社で用いられる方法)、走行時の転がり抵抗が小さくなり、エンジンへの負担を低減できます。改良型潤滑剤や耐性の高いタイヤを使用したり、エンジン制御を最適化することもこうしたアプローチの一部です。 自動車メーカーは、試験に向けた最適化を目的としてこのような手段を使用していることを認めていますが、少なくとも欧州試験については、試験のプロトコルはもはや時代遅れと考えられています。Transport & Environmentによれば、Daimler、BMW、およびFord社において、試験に向けての最適化が最も顕著だということです。

「自動車メーカーは、現行試験では対象車両搭載エンジンに対する負荷が非常に少ないため認証取得は確実と考えています」(車両追跡担当専門家)

また、その後に行われる試験にも不備があり、完全というわけではありません。というのも、車検では、排煙の透明度の点検はあってもCO2排出量点検は必ずしも行われないからです。

自動車メーカーを信頼するべきでしょうか?

車種によっては差があまりにも大きいため、Transport & Environmentでは、車自体が特定の装置の使用によって試験のタイミングを感知し、その試験の間人工的に排出量を下げることができるのではないかと疑っています。アウディ A8(路上走行で窒素酸化物排出量が基準値の21.9倍)、BMW X3(基準値の10倍)、Citroen C4 Picasso(基準値の5倍)などがその例です。それなのに、これらの車種はすべて、検査場でのテストに悠々と合格しているのです。また、これほどの差についても、試験に向けた最適化だけが単なる理由ではなさそうです。

この問題の核心から少し離れて、より広い観点から問題を扱ってみましょう。すると、決定は一体どのレベルで行われるのかという疑問が沸いてきます。どうやって、1100万台もの車に排出ガス規制を逃れるための不正ソフトを組み込むことができたのか、そして当局に知られることなく、これほどの規模で不正行為を再現することができたのか? 

VWグループの経営陣がこのような不正行為の事実について知らされていなかったというのは不可能です。ドイツ政府および欧州委員会は初めから知っていたと非難する声さえあります。

いずれにしても確かなのは、T&Eがこの3年間に、International Council on Clean Transportationによる検査結果に基づいて、排出ガス規制基準および燃費基準における排出量のごまかしに関して複数のメーカーを告発しているということです。「省エネラベルはまさに自動車産業における原動力となっており、メーカーは排出ガス規制基準に神経を尖らせています。ですから、本来の目的から逸れた行為が起きても不思議ではありません…」

フォルクスワーゲン社不正問題は「氷山の一角」にすぎません。スキャンダルというより、むしろ症候群なのです。

私たちは、排気ガス排出量にしても定期的な整備にしても、メーカーから公表されるデータの信憑性を疑う権利があります。さて、あなたはまだ、20 000kmごとのオイル交換を推奨するメーカーを信頼しますか? 

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